最後の一花
夕方植物たちに水をやっていたら、ジャスミンの最後の蕾が開いているのに気づいた。
去年の今頃、花の終わりの頃にラベンダーとアイビーとセットにして格安で売られていたのだ。ピークを過ぎたとはいえ、まだまだ花を楽しめそうだったし、3種の組み合わせの色合いがとてもきれいで、安くなっているのが不思議なくらいだった。
少し大きめの鉢に植え替えるとぐんぐん育ち、今年もたくさん花を咲かせて、うっとりする香りを放ってくれた。
うっとりする香り。。
ジャスミンと出会ったのは、20代半ば頃だ。ある集まりの休憩時間に、それほど親しいわけでもない人たちと気を遣いながらお茶を飲むのが面倒くさく思えて、近くのデパートのティールームに一人で行った。
案内された席はテラスに近く、楽しい気分で飲み物がくるのを待っているうちに、とてもいい感じの甘い香りが漂っているのに気づいた。
ケーキやお菓子の匂いでなく、なんか花のような…と辺りを見渡すと、テラスに設置されたラティス一面がツタみたいなもので覆われていて、白い花が咲いている。これしかない!と席を立って嗅いでみると、もううっとりとしか言いようのない良い香りがしたのだ。今のようにジャスミンが普及していなかった昔の話。
金木犀やクチナシも大好きな香りでうっとりするけど、それとはまた違う香り。ああ、植物たちの素晴らしさよ。
今日、皆より遅れて咲いた最後の一花。
ありがとう。なるべく長く咲いていて。